四世紀のローマ

ピーター・ブラウン教授のゼミ(アウグスティヌスの時代の諸宗教について)の準備のために以下の文献を読んでいる。

Michele Renee Salzman, On Roman Time (Berkley: University of California, 1990). ________. The Making of a Christian Aristocracy: Social and Religious Change in the Western Roman Empire (Cambridge: Harvard University Press, 2003).

最初の本は354年に使われていたペイガニズムに必要なカレンダーについての記述で、二つ目はどのようにしてローマの上流階級が四世紀後半にキリスト教に改宗していったかというもの。正直こちらの方が引き込まれる。 キリスト教の教理の優位性に重きを置いたmentalitéの研究や、当時の社会・政治的観点からの分析に代表される様なこれまでの学説を覆す力作。

方法論的にも四世紀前後に元老院に携わった414人のデータを使った分析なので、実証的にも優れた研究書である。名誉、富、権力を基本としたローマの Aristocracyがキリスト教に改宗していった背景には、四世紀のキリスト教会が彼らの求める名誉、富、権力を付与するに最も適当な存在であった事実が大きい、とサルツマンは論ずる。 それにしてもブラウン先生が関与していない英語圏の四世紀の研究書ってあるのか!?恐るべきおじいちゃんだ。