挑戦--2017--

重なり合う音が海上から静かに浮かび上がってくる。その音に身を任せながら、精神が物体を伴い動き出すのを感じる。水面上の光は、水の色を幾重にも変え、移ろいながらも、留まり続けるいのちの本質を浮かび上がらせてくれる。その一筋の光が重厚な石の部屋を照らす様子は、まるで恩寵が満ちていくよう。

 

あのゴルゴダの丘の古く血の匂いが鼻をつくほどの十字架が、いま闇を照らす光の筋としてある。冷たい石の部屋は次第にほのかに暖められ、その暖かさはじっと動かずにいた数々の生き物たちを活動的にさえする。

 

光はまた人々をその恩寵の部屋へ誘う。光に照らされ、暖められたその部屋で人は何を思うのだろうか。恩寵のイデアを建物として地に根を張らせた創造者を思うのか。あるいは、その光を与え、十字架を与えた創造者を思うのか。ああ、遠くに鳥のさえずりが聞こえ始める。

 

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