カルヴァンと神理解 - THEOLOGIA ET PHILOSOPHIA

カルヴァンの神理解については、いやというほど出版物が多い。バルト以降、特にカルヴァンの人間理性による神理解と啓示による神理解の分析に、多くのページが割かれて来た。戦後は、エミル・ブルンナーのもとでの博士論文であるDoweyのThe Knowledge of God in Calvin's Theology(1952, 1994)からはじまり、大きく分けてバルト派（P. Barth, Wil. Niesel）とブルナー派(Gloede, Dowey)にわかれて、議論が続けられて来た。１９３４年に出版されたブルンナーの『自然と恩寵』に対してのバルトの『否！』を通しての宗教改革の神学理解がことの発端である。

近年はおそらくRichard Mullerの仕事抜きには、カルヴァンを語ることはできないだろう。Brian G. ArmstrongやCharles Partee、ましてやマクグラスのおかしなカルヴァン理解など足下にも及ばない。ParteeはMullerを一介のカルヴァン・ドグマ信奉者として分類しているが、Mullerはまず第一に歴史家である。神学的に同意できないところは、沢山あろうとも、Kristeller, Obermann, Steinmetzの方法論を駆使して、カルヴァンとカルヴァン以降の神学を歴史・文脈的に理解している。勿論、それがあたりまえなのだが、あまりにも神学者によって宗教改革と宗教改革以降のの思想は歪曲されている故、方法論の強調は必要であろう。

２００９年がカルヴァン生誕５００周年ということもあり、様々なカルヴァンに関する著作が世に出たが、なかでもBruce GordonのCalvinそしてElsie A. McKeeの１５４１年フランス版の『網要』は必見だ。（私事ですが、ゴードンの伝記の書評がSt. Andrews大学のTheology in Scotland という雑誌に掲載されたので、興味のある方はコピーを送りますので、メールをください。）

カルヴァン以降の神の概念の発展は、John PlattのReformed Thought and Scholasticism: The Arguments for the Existence of God in Dutch Theology, 1575-1650を参照されたい。