スピノザとスコラ学

Massimilano Savini, “L’Horizon Problematique du Concept d’ens reale dans les Pensees metaphysique de Spinoza” in Spinoza et ses scolastiques: Retour aux sources et nouveaux enjeux, Frederic Manzini, ed. (Paris: PUPS, 2011), 99-113.

サヴィーニはスピノザの著作のなかで発展させられる「実在の有」(ens reale)という概念を、スコラ学とデカルト主義の背景と照らし合わせながら明らかにしていく。デカルトの哲学を受容したヘーレボールトは、事物の個体化の問題に直面していた。パルメニデスやメリッソスらが提起した一元論の問題が、アリストテレスの形相質料論を放棄した後に再度浮上してくるのである。この問題に対処するためにヘーレボールトは、ブルゲルスダイクが発案したmedium negationisという有と無の間にある様態を実質的に実体から分けて考察するために使用する。同様にクラウベルクは「思惟しうるもの」(ens cogitabile)という概念を使用することによって、有と無の間に存在するものを形而上学的に保証する。デカルトの哲学を整合性のある形而上学のシステムに構築しようとしたこれらの試みに対して、スピノザは、理性の有や、存在と無の間にあるとされるあらゆる有を否定する。さらにデカルトの属性を様態として理解することによって、事物の差異を様態的な差異に還元する。これによって、唯一の実体に対して複数の様態が存在することになる。しかしこの解決法の問題は、永遠と持続(duratio)という差異をもつはずの神と他の一切のものとの関係が不明瞭になることである。『形而上学的思想』では、実在的有(ens reale)の明確な定義は行われていない。しかし『エチカ』では、実在の有は神の永遠の相のもと(sub specie aeternitatis)におかれ、存在と非存在の差異が明確化されることになる。


Spinoza et les scolastiques

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