神と存在

新刊の紹介。現在オックスフォード大学の神学教授である George Pattison の最新作、『神と存在:一考察』(God and Being: An Enquiry, Oxford: Oxford University Press, 2011. pp. 350.)は、ハイデッガーの存在-神論 (Onto-theologie) の現代的神学意義を追ったものである。ハイデッガーを踏襲して60年代に Gabriel Vahanian や Thomas J. J. Altizer による「神の死」運動がおこっていながら、近年の様々な「神」回帰には目を見張るものがある。イギリスでは昨年 Richard Dawkins や Christopher Hitchens などの「無神論者」とアリスター・マクグラスの公開討論が話題になったり、Terry Eagleton や Salvoj Žižek などの左派系思想家によるキリスト教への言及も話題になっている。イスラムの世界ではもちろんのこと、日本でもオウム以降しばらく下火になっていたスピリチュアリティーへの注目や、様々な神懸かったものが、特にこの危機に直面しトラウマをおった社会に迫りくる。


キリスト教思想の分野では、ポストモダンの思想的潮流にのり、John Milbank 率いるラディカル・オーソドクシーなどが存在論的思考を復活させている。宗教回帰のながれにのり、トマス・アクィナスの存在論をラディカルな現代思想の克服につかい、新プラトン派のイアンブリコスなどの神秘的呪術 (theurgia) などの論理をもキリスト教礼典に適応させている。


Pattison の著作は、ハイデッガーの存在-神論をもとに、「存在」という概念を聖書からはじめ、アウグスティヌスやトマス、スアレス、ジルソン、そしてバルトによってどのように展開されて来たかを考察する。また、ヘーゲル、キルケゴール、サルトル、ハイデッガー、デリダとの対話を通して論を進めていく。


以下は目次である。


Introduction
1. Being, Salvation, and the Knowledge of God
2. Presence and Distance
3. Time and Space
4. Language
5. Selves and Others
6. Embodiment
7. Possibility, Nothingness, and the Gift of Being


God and Being: An Enquiry

God and Being: An Enquiry