中世概論

総合試験のため古代を終え、中世に突入。今週後半は立て続けに、概論3冊を読む。

Medieval Foundations of the Western Intellectual Tradition (Yale Intellectual History of the West Se)

Medieval Foundations of the Western Intellectual Tradition (Yale Intellectual History of the West Se)

Colishは「近代」という観点から中世との継続性・比継続性をとらえようとしている。さすがColishだけあって、概論であっても分析は鋭く、深いものとなっている。そのため概論として、読むには向いていないかもしれない。中世思想史にOld Norseなどの文学史を組み込み、重層的なしあがりになっている。残念ながら、魔術やカルデア文献の影響には言及しておらず、「近代」という観点が中世らしさをだす妨げになっているところは残念である。


The Church in the Later Middle Ages (The I. B. Tauris History of the Christian Church)

The Church in the Later Middle Ages (The I. B. Tauris History of the Christian Church)

Tannerは1300-1500年迄の後期中世を取り扱ったもので、政治的発展からイスラムとの接点まで取り扱った概論としてはふさわしいものである。ただ詳しすぎる部分もあり、羅列された教皇の説明などは飛ばし読みしてもよいだろう。


キリスト教の伝統 第3巻―教理発展の歴史 中世神学の成長

キリスト教の伝統 第3巻―教理発展の歴史 中世神学の成長

Pelikanは最近、和訳も出た(日本訳は学術的以前に、訳文がひどかった)、有名なシリーズの一冊。恣意的な中世論とか、ジャーナリズム的な歴史本と揶揄されることもあるが、教理史発展をとらえたいのであれば、まだまだ益多い書物ではないだろうか。中世西洋をアウグスティヌス的統合からの脱却ととらえ、教理と信仰の矛盾、議論、そして発展をうまく描写している。