アタナシウスと二ケア論争

David M. GwynnのThe Eusebians: The Polemic of Athanasius of Alexandria and the Construction of the 'Arian Controversy'(2007)をもって、一応アリウス議論関連の本を読み終わる。ほかにもR.P.C. HansonのThe Search for the Christian Doctrine of God: The Arian Controversy, 318-381(1988)や、Rowan WilliamsのArius: Heresy and Tradition (2001)を読む。

Gwynnの議論は、これまでのアリウス派とアタナシウスの論争に関する研究を脱構築するこころみである。研究者が使うほとんどの資料がアタナシウスの見解によって影響を受けていることを批判し、テキストと事実の乖離を論じている。確かに面白い試みだが、4世紀の事象を伝承されたテキスト以外から構築することは難しく、既存の見解をGwynnほど脱構築するのは、ほぼ不可能だろう。それゆえ、やはりところどころ無理な議論が生じているし、資料の恣意的な取捨があり、ときおり客観性に乏しい。

とはいえ、方法論としては面白く、この分野の歴史研究には必要な一書ではないだろうか。