スコトゥス論文 その2

Cyril Shircel, The Univocity of the concept of being in the philosophy of John Duns Scotus. Washington D.C.: The Catholic university of America press, 1942.

古い本ゆえに、戦前のスコトゥス研究について知ることができる。Shircelの目的は、トマス主義とスコトゥス主義の比較と、調和にある。スコトゥスのテキスト理解にはとても役立つが、トマスとスコトゥスを1277年の譴責を抜いて理解しているところは、やはりほかの文献と似ている。議論自体が、16世紀のThomas Cajetan の類推論から始まっているので、歴史的なスコトゥス理解ではなく、党派の問題に重点が置かれている。


Stephen D. Dumont, "Scotus's doctrine of univocity and the medieval tradition of metaphysics" in Was ist Philosophie in Mitelalter? Berlin: Walter de Gruyter, 1998. Pp.193-212.

Dumontの論文は、アリストテレスに始まる形而上学・存在論の問題から始まり、アヴィセンナ、アヴェロエスの形而上学の対比、そしてトマス、スコトゥスの対比へとつながっていく。スコトゥスの単一議論は、長く続くアリストテレス的形而上学の伝統の上に理解されなければならないと、Dumont は論じている。その上で、スコトゥスの議論は、存在を単一(univocal)として理解することによって、存在(ens)の理解を学 (scientia)とすることに成功した。それにより、超越の理解が深まり、近代科学への足がけをつくったとされる。スコトゥス理解のための重要な論文だ。